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欲への対価は高価。 [旅「ヨーロッパ」]


そのとき、誰かが後ろで、「POLICE!」と叫んだ。同時に、シャッフル男は動いた。ゴミ箱の上の板をサッと取り除くと、風のようにその場から消えた。気付くとギャラリーも減っていた。何度か賭けに勝っていた連中が見当たらなかった。サクラ。彼らは怪しまれないように用意したシャッフル男側の勝ち役だ。初めからカモは、リョウスケとジャック。シャッフル男はめくる時にすり替えをしていた。賞賛に値するテクニックだ。まんまとしてやられたのだ。「馬鹿め。あいつらはギャングじゃ。いかさまよ」麦わら帽子の老人がつぶやいた。知っているなら早く言えと文句を言おうとしたが、肩をすくめるだけにした。欲をかいた自分たちが、どうしようもない間抜けだっただけの話だ。金は稼ぐのは大変だが、使うのは簡単だ。ケチケチするのは嫌だが、せめて恥ずかしくない使い方をしたい。少しでも増やそうと欲をかいたときにはもう、その欲に対しての代金を支払っているのだ。


予想外の行動が、活路を切り開く。 [旅「ヨーロッパ」]


周りには、ギャラリーがゴミ箱を半周囲むように集まっていた。中には賭けに勝つものもいた。突然、リョウスケと同じように何度も負けている若いイギリス人の男が、意外な行動に出た。彼を仮にジャックと呼ぼう。ジャックは、シャッフル後に裏返しにされたコースターの中から、1枚選び20£を乗せ自ら表にめくったのだ!これは、シャッフル男にとって予想外の出来事だった。シャッフル男の顔にはっきりと狼狽の色が見えた。案の定、ジャックがめくったコースターにはしっかりと○印が付けられていた。ジャックは金を要求した。シャッフル男もギャラリーの手前下手なことはできない。しかも自分でめくっては行けないというルールは無いのだ。渋々と金を渡した。しかしそれの表情は明らかに他の勝者に払うときと違っていた。そこがひっかかった。今までも金は払っているのに、なぜ今回だけこんなにも悔しそうな顔をするのだ。金を払うことには抵抗は無いはずだ。(続く)


耳よりな話ほど、多くの罠が待っている。 [旅「ヨーロッパ」]


リョウスケとコベンドガーデンを歩いていると、路地脇に人だかりを見つけた。新手の大道芸かと思い、Excuse meと言いながら前方に行くと、男がゴミ箱の上に板を乗せ、忙しく手を動かしている。しばらくすると男の動きが止まった。そして、あちこちから20£札が飛んできた。これはギャンブルだった。男が動かしているのは3枚のコースター。そのうち1枚にだけ、裏面に○が書いてある。ギャラリーはシャッフルされた3枚の中から印の付いたものを当てるのだ。一口20£で当たれば倍返し。男は、コースターをくるっと回したり、空中に放り投げたり、喋りながら器用にシャッフルを繰り返す。しかし、ある程度の動体視力があれば、動きについていけないことは無い。事実、観客のときは百発百中させた。だが、なぜか賭けると当たらない。だんだんおかしいと思い始めてきた時にはもう遅い。既にリョウスケは100£以上つぎ込んでおり、後には引けない状況だった。(続く)


習慣に飼いならされたら、貧乏農場へ。 [旅「ヨーロッパ」]


マリと同じ空気を吸いながら、ゆっくり時は流れていた。白く濁った部屋の中で、時間の感覚はとっくに麻痺している。けだるさの中で研ぎすまされた神経が、針となって壁の一点を刺し続けた。壁のシミはすぐに顔になった。感覚は細く鋭く暴走している。アムステルダムの安宿スリースター。階段で昇った3階の部屋には4つベッドがあり、窓から水路が見えた。少し前に始めた有名なカードゲームは昼も夜も無く一日中続いた。誰もあがらない永遠の遊戯。案外人生もアガリの無いゲームなのかもしれない。自分のターンで、手持ちのカードを選んで切る。受験、就職、結婚。みんなが止まるマスは赤色ゴシックでストップと書いてあった。前にも誰かが止まったマスだと思ったら、急に気持ちが悪くなった。トイレから戻ると、ゲームは終わっていた。ゴールがハッピーエンドとは限らないけど。途中で止めるなんてあんまりだ。気がつくと、部屋の隅に麦わら帽子が落ちていた。


本当のことは、たくさんある。 [旅「ヨーロッパ」]


重厚にたたずむ名探偵の姿は、アイデンティティの塊だ。パイプ、ディアストーカーに両つばハンチング。その全てが彼だった。ハンチングを見ながら、僕の麦わら帽子もそうなればいいなと思った。サー・アーサー・コナン・ドイルの書いた小説によるとシャーロック・ホームズとワトソン博士は1881—1904年の間、ベーカー街221Bにあるヴィクトリア朝の下宿屋に住んでいた。数々の難事件を解決する名コンビ。しかし、現実は退屈だ。難事件なんてない。だから、推理小説と言う麻薬にはまる。ホームズがコカインにはまっていたように、必然性がある。真実はいつも一つ。あるアニメの主人公の決め台詞だ。確かに真実はいつも一つかもしれない。でもその真実にも多面的な見方があるはずだ。私は彼を殴った。殴ったことは事実と言える。しかし真実は、向かってくる車から救う為にとっさにとった行動だったかもしれない。真実は受け取る人によって変わるのだ。


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