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もとからあるカタチを、掘り起こしてあげるだけでいい。 [旅「アフリカ」]


昼食のときに座った椅子が好きだった。ケニアの小さな村のレストラン。丸太一本を切り出して作った椅子は、背中にピタリとフィットし、木の一部になったように感じた。別々のモノを組み合わせたら得られない究極の一体感。麦わら帽子をいじりながらパトリックは言った。「最初から考えて木を削らない。もとから持っているカタチがある。それをただ掘り出してあげるだけ。土の中の化石を掘り起こすのと同じように周りを丁寧に取り除けば、自ずと内包する姿が現れる」。これは可能性の具現化、また資質の実現化と言えないか。この考え方はモノだけではなく、人間にも当てはまる。自分がどんなカタチ、資質を有しているのかわかれば、それに合わせて人生設計が可能だ。しかし、悲しいことに僕には丸太から椅子の姿は見えない。だから、もがき苦しみ回り道をする。神様、もし才能があるならそっと教えてくれないか。いや、きっと努力した者だけにその声は届くのだ。


たどり着いたら、少し足を止めるのも悪くない。 [旅「アフリカ」]


夜中の登山は寒い。9月だというのに、ウインドブレーカーが手放せなかった。シナイ山。モーセが神から十戒を授かった山。エジプトのダハブからワゴン車に揺られ3時間。ご来光を拝むため、20人ほどの団体は巡礼者のようにぞろぞろと頂上を目指した。真っ暗な山道にいくつもの小さな明かりが灯る。ゆっくり動くリズムは神秘的な竜となり坂道を上る。3時間後、ようやくてっぺんに着いた。麦わら帽子を脇に置き腰を下ろす。ゆっくりと辺りが白くなってくる。そろそろだ。耳の側でレディオヘッドのピラミッドソングが響いた。隣のアメリカ人ジャックは63歳の旅行ライターだった。羨ましいと言うと「家族もいない。今はただ、旅することが生き甲斐だ」と、寂しそうに彼は言った。留まることの無い生活はどこに終着するのだろう。毎日変わらず昇る太陽と、裸の山肌を見ながら、この全てを見透かすような光が、彼の道をずっと照らし続けてくれればいいと思った。


神様のシナリオは、クドカンに負けない。 [旅「アフリカ」]


「絶対買わない方がいい。後悔しますよ」シンはさっき売店で買ったチーズサンドをパカパカと開いた。夕方、エジプト空港の休憩テーブル。最後の腹ごなしの最中、身なりのいい婦人においしいかと聞かれた。「具は薄いチーズが3枚。バターすら塗っていない。これで60エジプト£はひどいよ」と、僕も麦わら帽子を脱いで訴えた。貴婦人は「ありがとう」と微笑むと、売店へ近づいた。突然、真っ黒なスーツを着たSPが僕らの目の前に現れてこう言った。「ありがとうございました。我々は政府の人間で、現在空港サービスの調査中です。あなた方の率直な意見に大臣も喜んでおられました。エジプトは変わります。まずはそのパンから始めます」男はそう言って丁寧に頭を下げた。なんと!僕らは顔を見合わせて笑った。60£にこんなオマケが付いているとは、神様もなかなか面白いシナリオライターだ。振り返ると夕焼けを店主が必死に言い訳をしている姿が目に入った。


フラミンゴの一群は、右へ行き左へ行く。 [旅「アフリカ」]


ナイロビからマサイマラ国立公園へ向かう途中にあるナクル湖。ヒヒがいる森を抜けてたどり着いた湖は、ピンクの絨毯を浮かべた色をしていた。赤潮だけでなく、ピンク潮があるとは世界は本当に広い。鼻がもげそうなニオイを我慢しながら湖へ近づくと、鮮やかな色の正体はフラミンゴの群れだとわかった。異様な光景だった。何百羽のフラミンゴが、一塊となり右左へ移動を繰り返している。まるで鳥の宗教。餌を求めて歩いているのかと思ったが、それでは行き来の説明がつかない。狂信的な大移動は、UFOを呼ぶ踊りと言われれば納得だ。だが、それは人間ではなくフラミンゴだった。麦わら帽子を持って近づいてきたパトリックに尋ねたが、ケニア人でもわからなかった。全てのフラミンゴが自らの意志で行なっているのか。流されるまま、移動するフラミンゴもいるのではないか。ふと、満員電車で揺られる自分を思い出して、もしそうなら人間と変わらないなと思った。


黒い心は、何色にも染まらない強い侵略者である。 [旅「アフリカ」]


あたり一面に黒い山が見えてきた。神様の子供たちは、公園デビューした日に、砂場にたくさんの黒い山を作った。この光景はキューピット達の遊んだ後だ。アシュラとの長い交渉の末、ツアーは100ドルになった。獲得したハイエースは、おんぼろだったがここまでの旅路で性能は証明された。トップスピードは80キロ。ここまで3台のランクルが駿馬のように追い抜かしていった。とにかく、最初のドロップポイント黒砂漠に到着したのだから文句はない。黒曜石が堆積した山は、異様な邪気を立ち上らせる。天使の仕業に悪魔の顔が笑っている。気分はファイナルファンタジーのキャラクターになった。槍を持つ竜騎士となって、黒い雨を降らせるモンスターを倒すのだ。シンが坊主頭を触りながら、レディオヘッドのピラミッドソングを口ずさむ。この山でなら泣いたまま眠ってもいいと思えた。麦わら帽子を下に向かって勢いよく飛ばす。遠くでアシムが呼ぶ声が聞こえた。


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